がくせん!まとめ (〇□〇)
「視線の先」
大和カンナの視線は、教室の一ヶ所へと向けられていた。
自席に着き静かに教科書を眺める後ろ姿。
すらりとした長身とそれに見合う赤茶の長い髪が、後ろ姿だけだというのに目を惹きつけた。
咲元みつはは、カンナが会話らしい会話を交わした事のないクラスメイトの一人だった。
…他に何人いるのかはこの際置いておこう。
嫌っているわけではない。話し掛けるきっかけがないのだ。
席の都合上、座学の時間は後ろ姿を眺める事ができるがそこ止まり。
教室を離れ実技を伴う訓練ともなれば、所属する隊が違う為姿を見掛ける事すら叶わない日々だった。
ぼんやりと赤茶の髪を目で追う。迷い道のない真っ直ぐな髪は、すんなりと毛先へと辿り着いた。
「なーに見てるの」
「ひぃっ」
背後からの声と肩に何かが乗る感触に、カンナは教室内だというのに素っ頓狂な声を上げていた。
振り返り見上げると、長い黒髪から覗く緑の瞳が見下ろしている。その手はカンナの肩に乗せられたままだ。
「大公寺君…」
「あー、みつはちゃん」
呼び掛けたのを遮って、大公寺エレキテルはカンナの視線の先を確認して呟いた。
「見てたの?」
「みっ、て、ない…です」
カンナを見るエレキテルの目は、なんで敬語?とでも言いたげな目をしていた。
咄嗟に返事をしていたカンナ自身、その違いが出た理由が分かっていなかった。
二人の会話に気付いた周囲のクラスメイトが、興味があるのかないのかちらちらと視線を送ってくる。
幸い、みつはが振り返る様子はない。聞こえていない事をカンナは祈った。


「…綺麗だなぁって、思って」
ややあってカンナが口を開く。
もうすぐ始業の鐘が鳴るであろう時間だが、教室内にはそんな空気が微塵も見えない。
言葉を拾ったエレキテルは、おお、と興味深そうにカンナを見た。
カンナの視線は、再びみつはへと向けられている。
「女の子」
「……、…ん?」
ワンテンポ遅れた返事にはおそらく様々な疑問符が込められていたのだろうが、そこに対する返事は無い。
まさかと思ったエレキテルがカンナを見ると、その視線はまるで未知の存在を見るかのようなもので。
「不思議だよね」
きみの方が不思議だよと、エレキテルは胸中で突っ込んだ。