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タグ: ソレイル

お題:太陽

「どしたの」
普段の苛立ちと嘲りしか浮かべていないような顔が一瞬青ざめたような気がして、メルレイトは首を傾げた。
問い掛けられたケンザートはチッと舌を打ち、吐き捨てるように答える。
「なんでもねぇ」
「いや、明らかに様子変だから」
即座に切り返すメルレイトに、ケンザートの眉根は更に寄せられる。
とは言え、それ以上聞き出そうとする興味も執着心もメルレイトは持ち合わせていない。
話を続けるのも無意味だろうと判断し、踵を返そうとする。
丁度その時だった。
メルレイトの脳裏には、ふっと導くべき道が浮かぶ。そしてその道を見て、あぁ、と一人納得したのだった。
「ねえケン」
「んだよ」
「見付かるのが嫌なら隠れた方が良いよ」
「………は」
ケンザートが訝しげな目を向けた直後、その助言を発した相手がメルレイトだという事実に気付き、そして意味を理解する。
しかしそこから最前の行動を実行するには、少しばかり時間が足りなかったようである。
「ケーーーーーーーン様!」
高らかな声が背後から降ってくると同時に、ドンッと肩に重みを感じる。
振り返らずとも分かる声の正体に、ケンザートは八つ当たりをするかのようにメルレイトを睨み付けた。
「助言はしたから」と目で伝えてくる彼女には、全くの意味を成していなかったが。
「ケン様!今日はどんな術教えて下さりますか!俺めいっぱい辺り焼き尽くせるようなったんですよ!次はどんなこと学べばいいですか!」
返事も待たず矢継ぎ早に飛び出す言葉に、既に遠巻きに見ているメルレイトは肩を竦め、当事者であるケンザートはわなわなと肩を震わせている。
犬であれば千切れんばかりに尾を振っていそうだと思わせる彼は、これでも一応太陽を司る青年である。
長身であるケンザートに飛びつく彼もまた長身。事情を知らぬ者から見れば奇怪な図が繰り広げられている。
「てめぇ…もう来んなっつっただろうが」
「ソレイルです、覚えて下さい!」
「そういう問題じゃねえ!」
プッと吹き出すメルレイトに気付き、ケンザートの怒りの勢いは更に加速するのだった。

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20分

レナ側