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タグ: ファナ

お題:日常

「え、うそ」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまうくらいには、実の姉の言葉を信じることが出来なかった少女が一人。
きょとんとする表情を、何度も瞬きを繰り返しながら見つめる。
「付き合って…ないの…?」
こんなところで嘘をついたりはしないだろうと分かってはいても、二度目の確認を止められなかった。
少女の隣には黙り込んだ少年もおり、しかし表情は少女のそれと同じであり、驚きを隠せていないのは明らかだった。
少しの間を挟み、静寂が流れる。
呆然とした視線を向けられたままの少女の姉は、居心地悪そうに目を斜め下へと向けた。
「そういうの、分からないから」
小さな声が、困ったように紡がれた。
それ以上言葉を続けることの出来なくなった少女と少年の肩に、ぽんと手が置かれる。
「周りがとやかく言う事じゃないよ」
二人が振り返るとそこには、二人の見知った顔が一つ。
「お姉さんもお兄さんも、仲良いんだからそれでいいじゃん」
ね?と言って首を傾け、そしてその表情と言葉に、二人は揃って頷いた。

「……でもさ、ねえ、イズ」
少女は隣を歩く少年にこわごわと声を掛ける。
少女の姉と別れた後、三人は揃って歩いていた。会話はようやっと今始まった所だった。
しかし少女の言葉はそのまま続くことはなかった。
口を噤み、視線を不自然に揺らす。
一人の少年は少女と同じように口を噤み、もう一人の少年は前を向いたまま表情を変えない。
「なんでもないよ」
間を置いた後に、少女は自ら会話を終了させた。けれど。
「言いたいこと分かるから、言わなくて良いよ」
前を向いたまま、表情を変えないまま、少年は静かにそう言った。
その言葉で、少女ともう一人の少年は思わず足を止めた。数歩先で、少年も足を止める。
振り返った表情は二人が想像していたよりも穏やかだった。
「俺は大丈夫だから」
ふわりと笑う姿は、いつもと何も変わらない。
「原因は兄貴だよ。だから恨まれるのも分かってるし、それを否定しない。でも、だからこそ俺は兄貴の味方でいたいし、俺が恨むのは兄貴にとっての原因だから」
その言葉もいつもと変わらない。
その考えを否定しない二人もやはり、いつもと変わらない。
それが彼らの日常だった。

ただ少しだけ、人数が増えて揺らぎが出来てしまったことが、彼らにとっての日常への変化だった。

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20分

一次創作