パチパチと音の鳴る花をじっと見ていた。
いつか終わってしまう事も、その時が案外あっという間にやってきてしまう事も頭の中では分かっていた。
けれどその同じ頭の中で、ずっとずっとずっとこの音が鳴り続いていればいいのに。そう思っていた。
火花が飛び散り、その反動で花は小さく揺れている。
微かな振動がじんわりと指先に伝わってきて、あまり揺れるな、と念じた。
念じたって、祈ったって、何も変わる事はない。そう分かっているのに。
「深刻な顔しすぎだって」
急に声を掛けられて、ビクッと腕を大きく揺らしてしまった。
慌てて手元を確認すると、そこにはまだ必死に咲き続ける花が揺れていた。
バレたくなくて、小さく小さく息を吐いた。それから返事をした。
「なんか、夢中になっちゃって」
しゃがんでいた自分の隣に、声を掛けてきた人物―――峡もしゃがみ込む。
さっきまで向こうではしゃいで騒いでいたのに、こういう時だけ声が全然違う。そう気付いていた。
峡はしばらく何も言わなかった。
ただじっと、手元に揺れる花を見ていた。
邪魔するわけでもなく、競うわけでもなく。ただじっと、見ているだけだった。
そしてやがて―――ぽとんと最後の命が落ちた。呆気ない終わり方だった。
目一杯咲いて咲いて咲いた花は、何も残さずに終わっていった。
「綺麗だったな」
峡はそう話し掛けてきた。
きっと、何を思っていたのかくらいは見通されている。
きっと、それを分かってて隣に来て、一緒に眺めて、言葉を選んでる。
期待しすぎている部分がありそうな気もしている、でも裏切られはしないような気がしていた。
「うん。綺麗だった」
こくんと頷いて、そう答えた。
「何も残らなくてもさ、いっぱい盛り上がるし、綺麗だし。ずっと覚えていられるよな」
しゃがんだまま、こちらを見ることなく峡は呟いていた。
話し掛けるのと同時に、それは自分に言い聞かせているようにも見えた。
「うん」
それには、頷く事しかできなかった。
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15分