うーん、と少しだけ考えながら光麗は迷っていた。
身体を後ろに傾け、両手を着いてぐいと仰け反ると木々の隙間から真っ青な空が見える。
清々しくて、気持ちのいい朝だった。
ゆったりと流れる雲を見て、優しい風が流れているのだと知る。
風に言葉を伝えて貰う事は、光麗には簡単な事だった。
でもなぁ…、と独り言を呟く。
様子に気付いたのか、風がサワサワと草を揺らして光麗の周りを回る。
金色に輝く髪を揺らし戯れてくる風に、くすぐったそうに少女は笑いかける。
「あのね」
姿の見えない相手に光麗は話しかける。
「贈り物をしたいんだ」
ふわりと静かに舞い上がるような風は、彼らなりの相槌だろうか。
光麗もうんうんと頷きながら続ける。
「でも、何がいいのかなぁって」
風は、今度はくるりと回ったりさっと通り過ぎたりと、少しだけ慌ただしそうだった。
これは彼らなりに迷っているという事なのだろうか。
言葉は当人同士か、光麗にしか分からない。
「うん、気持ちがあればいいのは分かるんだけど、どうやったら気持ちって伝わるのかなぁ」
腕の力を抜いて、光麗はそのままパタンと仰向けに倒れた。
空が一層遠くなる。
両手を伸ばしてみても、空や雲どころか木々にすら手は届かない。
「光は何をもらっても嬉しいよ」
端から見ればずっと独り言を呟いているようにしか見えないが、今のは恐らく風が問い掛けたのだろう。
腕を伸ばしたりパタリと地面に放ったり、そう何度か繰り返しては光麗は迷いを唸り声にして吐き出す。
うーんうーんと迷った末に、寝転がったまま、うん、と頷いた。
パッと起き上がるとそのまま立ち上がり、くるりと辺りを見回す。
「大丈夫かなぁ」
目的の物を手に取り、まだ少し迷いながらも空を見上げる。
「うん、大丈夫だって、思っておく!」
こくんと頷き、にっこりと笑い、そして。
「じゃあ、よろしくお願いします」
風がぶわりと森の中を駆け抜けていった。
竜神は突然の出来事に目をパチクリとさせていた。
いきなり突風が吹いたと思ったらこの有様である。
風という事はその原因となる人物に心当たりは一人しかいない。
彼女がやった、と言われればそうだろう、としか返せない状況でもある。
開けていた窓から飛び込んできた贈り物。
一瞬で部屋の中には、色取り取りの花がたくさん散りばめられていた。
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20分