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お題:迅夜と峻で何か

じーっと見上げてくる視線に気付き、峻は怪訝そうに前を向いた。
峻の目の前の席に座る迅夜は、肘を立てカップに刺さったままのストローをくわえたまま、じっと峻を見ていた。
「なんだ」
「んー、いや、峻ってこういう店にいるの似合わないなぁって思って」
迅夜は淡々と、ストローを口から離さず器用に答えた。
ファーストフード店の一番奥の角の席。
さほど混んではいないから問題はないだろうと4人掛けの席に2人で座り、テーブルの半分には飲み物、もう半分にはノートと筆記用具。
この店に呼び出したのは、迅夜の方だった。
「悪かったな」
面倒な言い合いはごめんだ、とでも言いたげに、峻はぶっきらぼうにそう言い放つ。
「別に悪いって言ってないじゃん」
ようやくストローを離し、少し呆れたように迅夜は笑った。
一瞬ムッとした顔を作る峻だったが、すぐにそれを抑え再びノートに視線を落とす。
暗号のような殴り書き。
辛うじて数字だとは分かるが意味を成しているとは思えない羅列。
迅夜の書いたノートを、峻は溜め息を吐き出しながら右へ左へと眺める。
新しいの書いたから見て!という迅夜の誘いは、新作の暗号ができたから解読して!というものに他ならない。
不定期に飛び込んでくるその話を、峻は断りはしないのだが。
「聞いてくれれば答えるけど、全部お任せでもいいよ」
いつもみたいに。
語尾に星マークでも付きそうな声で、迅夜はウィンクをして見せた。
峻の溜息はもう一度深く深く吐かれ、そして「分かった」と頷くのだった。

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15分