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お題:バトル物

炎を纏った腕で思い切り殴り掛かる。あっさりとかわされる事を見越して蹴り上げた足は、ばしゃりと音を立てて柔らかで強固な壁に阻まれた。失敗だった。一瞬だけ宙に浮いていた透明な壁が重力に従って崩れた時、既に少年は数歩の距離を置いていた。
小さく舌を打ち、遊龍はもう一度駆け出す。同じ手を…そう呆れたように溜息をついた竜神は、今度は守るだけではなかった。遊龍が目前に迫るその直前、薙ぎ払った右手からは無数の小さな刃が飛び出す。
「げ」
嫌そうに声を上げ、遊龍は足を止め一歩退く。その瞬間に、竜神の右手が再度空を切り裂いた。
「ってー」
ドサッと見事な音を立て、遊龍は尻餅をついていた。その目の前には竜神が見下ろすように立っている。勝負あり、の様子にも見えるが、竜神の表情はあまり明るいとは言えなかった。
「お前そんなやり方じゃいつか死ぬぞ」
「今死なないなら問題ねーし」
遊龍は息を吐きながらゆっくりと立ち上がる。
「……、よく避けたな」
竜神の機嫌がよくない原因はここだった。確実に命中した、そう確信していたはずなのに、避けた時にできたであろう擦り傷以外の傷が遊龍にはなかった。
「死なないように戦えって」
ニッと笑うと、遊龍は竜神に向けて中指を立てる。
「そう教わってるから」
竜神の表情が大きく苛立ちに変わった。

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15分